避難所用テントを開発し、
防災ビジネスで起業へ。
建築学部 建築学科 1年生
※取材当時
筒井 海人 さん
近年、大地震や豪雨など、大きな災害が後を絶ちません。多くの命が失われる中、災害そのものによる直接的な被害に留まらず、避難生活における環境変化に伴う持病の悪化やストレスを原因とする、いわゆる「災害関連死」が増加傾向にあることをご存知でしょうか。この問題を何とかしたいという強い想いから、僕は「避難所用テント」を考案しました。体育館などでの避難生活と異なり、プライベート空間を確保でき、衛生管理面でも優れた避難時の居住空間を、比較的低コストで実現することを目指したものです。
将来的には、このテントを全国各地の自治体で使ってもらいたいと考え、法人化を前提とした起業に挑戦しています。大学で建築を学びながら、この防災ビジネスの立ち上げに向けた準備に励む毎日が、今の僕にとって何よりも充実した時間となっています。
三田市『起業家育成プログラム』の最終段階となるピッチ発表会の様子。実際に被災地を訪れ、自らの目や耳で確かめたリアルな体験が事業計画の有効性への説得力を高め、歴代最年少での優勝に。「大学生の参加者は僕を含めて二人だけで、他は全員、社会人の方ばかり。そんななかで優勝できたのは、本当に自信になりました」。
幼い頃から意識してきた
「防災」「ものづくり」そして「起業」。
自分の中のすべてが、
建築学部と結びついた。
私の父は神戸市、母は宮城県石巻市出身です。それぞれ大きな震災を経験した両親から、幼い頃より防災の大切さを教わり、地域のジュニア防災リーダーを務めるなど、防災と深く関わりながら育ちました。また、溶接会社を経営する父からは「ものづくりの楽しさ」、ブロックのおもちゃやクラフトゲームを通して、クリエイティブな活動への関心も高まったと思います。建築学部に進学したのは、この防災とものづくりという、私にとって大切な二つの要素が深く関わる分野だと考えたからです。
父が経営者であったこともあり、起業への興味は以前からありました。当初は「起業=お金儲け」という漠然としたイメージでしたが、高校生の頃に「起業は手段であり、まず明確な目的や意義が必要だ」「自分にとって一番大切な防災こそ、取り組むべきテーマだ」と考えるようになりました。そして高校三年生の時、避難所用テントのアイデアを思いついたのです。「これはきっと役に立つ、ぜひ多くの人に使ってもらいたい。でも行政に提案し導入してもらうためには、法人化が不可欠だ」と、起業の目的も意義が明確になったことで、「大学生になったら起業しよう」と決意し、起業支援プログラムが充実した関学へ進学しました。実際入学してみると、現役の起業家や行政と繋がれる機会が多く、テントの設計に必要な専門知識や、防災課題への建築学的アプローチなどについても深く学べ、入学して本当に良かったと感じています。
被災地の方々の切なる想い。
熱心な経営者の方々からもらった刺激。
それらが力となって、
三田市の起業家育成のプログラムで優勝。
ここまで順調に進めてきましたが、「まだ大学一年生なのに?」とか「非営利ではないのか?」といった声を耳にすることがあります。年齢は一つの判断材料になるのかもしれませんが、私自身は「もっと早くから始めれば良かった」と感じるほどです。そして「防災=ボランティア」のイメージを持つ方もいますが、利益を生むビジネスでなければ解決できない規模の問題が存在します。昨年の夏、僕は能登半島を訪れた経験が、その想いを一層強くしました。避難所で不自由な生活を送られているご家族や、民間避難所を運営されている方々のご苦労を目の当たりにし、このテントで救える命がきっとたくさんあると確信したのです。その強い想いが、今の私の原動力となっています。
様々な活動を通して出会った起業家や経営者の方々からも、たくさんの刺激をいただいています。例えばインターン先の社長は、朝から夜遅くまで誰よりも懸命に働き、「それを惜しんだら社長を引退する」とまで仰います。そうした方々の姿勢から学べることは、何よりもうれしいです。三田市の起業家育成プログラムでの三田市長に向けたピッチでは、歴代最年少で優勝を果たしました。多くの方々からいただいた刺激や学び、そして何よりも被災地の方々の想いを届けたいという強い気持ちが、このような結果に繋がったのかもしれません。この経験を通して、自身の取り組みへの確かな自信を得ることができました。まだまだ課題も多いですが、この先の展開が本当に楽しみです。